インターン体験記:水口隼希
はじめに
2019年の9月から3月のコロナウイルスによる突然の帰国までおよそ半年間、北欧研究所にてお世話になりました。紹介してくださった北欧研究所の先輩、また素晴らしい環境を作ってくれたインターンの同僚に感謝をしたいです。また学生の身でありながら長期インターン生としてデンマークにおけるインターンシップという、極めて貴重な機会を設けてくださった代表の安岡美佳さんにはとても感謝しております。 More
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はじめに
2019年の9月から3月のコロナウイルスによる突然の帰国までおよそ半年間、北欧研究所にてお世話になりました。紹介してくださった北欧研究所の先輩、また素晴らしい環境を作ってくれたインターンの同僚に感謝をしたいです。また学生の身でありながら長期インターン生としてデンマークにおけるインターンシップという、極めて貴重な機会を設けてくださった代表の安岡美佳さんにはとても感謝しております。 More
私は、通っていた大学を休学し、北欧研究所で約5ヶ月間お世話になりました。休学をしてまでのデンマーク渡航は私にとって大きな決断でしたが周りの支えもあり、帰国した今、当時の決断を褒めてやりたいと思えます。この5ヶ月間を終えて、何度も自分と向き合い、周りの仲間に感化され、少しではありますが以前の自分より成長を感じています。本当に貴重な経験をありがとうございました。 More
私は約1年間、北欧研究所でお世話になりました。留学を計画立てていた頃から熱望していた、北欧研究所でのインターンシップでは掲げていた目標を上回るほど、多くの経験から学ばせていただきました。特に、私のインターンシップの経験はコロナウイルスによる制限もありましたが、支えてくださった安岡さんをはじめ、研究者の方々、インターンシップの仲間のおかげで、今後の人生軸を築けたものになりました。 More
オンラインマガジン、エネルギーフロントライン「エネフロ」に、弊社代表安岡が執筆した記事『北欧のエコビレッジ訪問記』が掲載されました。世界中から注目される『パーマトピア(Permatopia)』は、先端技術を駆使し、環境に配慮した生活を訴求する最先端社会。パーマトピアは、エコビレッジの特徴を持ちつつも、新しい未来の生活の可能性が見えてきます。技術は、人を幸せにできる!そんな一端がかいま見えるようです。北欧研究所では、技術を恐れるだけではなく、どう使えるのか、どう使うべきなのか、今後も模索していきたいと思っています。
謹んで新春の祝詞を申し上げます。
昨年は、格別なご高配を賜り厚く御礼申し上げます。2020年の新年を迎えました。皆様、どのように新しい年を迎えられているでしょうか。
北欧研究所では、日本・北欧の両側からの大きな関心を受け、2019年も活発な研究・調査の一年となりました。企業とのコラボレーションや依頼のみではなく、地方自治体を始めとした公共機関とのコラボレーションが多く執り行われたのも2019年の特徴と言えます。人を幸せにするテクノロジなど、社会性の高い課題に関する関心が、産業界、公共機関から北欧に向けられていることがわかります。取り扱ったトピックとしては、SDGs、持続可能性、エコビレッジ、スマートシティ、電子政府、イノベーション教育、ヘルスケアIT、リビングラボなど多分野に渡りますが、北欧への関心に共通性も見出すことができます。それは、多くのコラボレーションや依頼は、社会がより幸せになるための方法論を模索しているがため、北欧に辿り着き、北欧研究所にアクセスしてきているという点です。
現在の社会課題に対し、より多様性に配慮した解決策を導き出すためには、多様な立場の人の知見や参加が不可欠です。それは、北欧社会の基盤に根付く民主主義や、北欧が得意とする参加型やリビングラボといった方法論から、私たちは学ぶことができるかもしれません。北欧の社会を見ていると、その賢い仕組み作りに驚かされます。社会は、一朝一夕で作り出せるものではなく、長期的なビジョンと、ビジョンを達成するだけの人材を育成するための教育と皆が平等で暮らすことのできる仕組みづくり(民主主義)が不可欠だからです。
私たちは、何を北欧から学び、何を共に考え、より良い社会づくりに貢献していくことができるのでしょうか。北欧研究所は、北欧に拠点を置く調査機関として、今後も、両国の発展とさらなるより良い関係の構築を目指していきます。本HPだけではなく、フェイスブックやリンクドイン、インスタグラム、Noteなどで発信を続けていきます。
最後に、北欧に関連した皆様の業務・ビジネスのさらなる充実と飛躍を祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
北欧研究所 一同
noteのマガジンにて「ハピネステクノロジ」の連載を始めました。
ぜひ、ご覧ください。
デンマークは、先端技術が次々と生まれる国というわけではないものの、国内外の先端技術をうまく活用した生活を良くする工夫が次々と生まれる、人を幸せにする技術の国だと考えられます。
北欧に拠点を置く北欧研究所は、「我々の幸せを向上するためにICTは何ができるか?」を追求しています。本連載では、デンマークをはじめとした北欧で花ひらく「人を幸せにするテクノロジー」をハピネステクノロジーと呼び、事例を紹介させていただこうと思います。新しい技術が生活に受け入れられるには、単に技術的進展ばかりでなく、ビジネス上の妥当性や使い勝手の良さが不可欠になります。テクノロジーが人々の生活に恩恵をもたらす北欧の事例を見ることによって、人とテクノロジーの関係性について何かしら学べる点があるのではないか、それを解き明かしていきたいと考えています。
なお、1-5までは、2019年にオンライン雑誌に掲載されたものの、雑誌のクローズが決まったために、加筆・修正を加え、本noteに再掲載することにしたものである。
オンラインマガジンJapan In Depthに弊社シニアコンサルタント白石が執筆した記事が掲載されました。「コペンハーゲン、世界初CO2フリー目指す」 と題された本記事は、9月末に開通した地下鉄環状線を特集したものです。
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去年、北欧研究所安岡が執筆したエッセイ「A Year in Venø」をAmazonにて発売しておりましたが、技術的な問題が見つかり販売を一時停止しておりました。
スタッフ一同、どのような方法が読んでいただく皆様に適切かを考え、新たにnote.muでマガジン販売を行ことにいたしました。
Amazonでご購入いただいた皆様につきましては、直接お詫びをさせていただきたく、タイトルと購入時期を明記の上、ご連絡いただければ幸いです。
現在プロローグから徐々にマガジン内にアップしております。ヴェヌー島の暮らしを是非お楽しみください。
【内容紹介】
ヴェヌー島は橋のかかってない島の一つで、
そこでは、
News, ESSAY イノベーション・創造性教育, インターン体験記, 北欧流参加型デザイン
昨年12月末から3月末までインターン生として北欧研究所で活動していました、徳島大学助教の笹尾知世です。徳島大学では、昨年4月に地域の内外から社会共創を目指す「こまつしまリビングラボ」をスタートし、私はこのプロジェクトの立ち上げから企画・運営に携わってきました。3ヶ月間北欧研究所に在籍する中で北欧における様々な社会イノベーションの現場を見たり話を聞くことができ、ここで得た知見や人との繋がりを徳島で活かしたいと考えています。
デンマークに来て驚いたことの一つは、社会の中に良質な子供達を育む場がたくさん用意されていたことです。例えば多くの美術館やギャラリーでは、展示中の作品のコンセプトが伝わるよう秀逸に設計された工作プログラムが毎日のように開催されていました。また建築センターやデザインセンター、その他様々なオフィスの入る複合施設BLOX(写真)では、建物の一部が子供のための遊び場として機能しています。社会全体で幸福な子育て環境の創出が目指されているように感じ、こうした取り組みを徳島でも実現したいと思いました。
コペンハーゲンに留学中の5ヶ月間、インターン生として活動していました。今回が自分にとって初めてのインターンシップで、業務がこなせるかどうか不安もありましたが、自分ができることから任せていただけたので、スムーズに仕事に取り掛かることができました。
北欧研究所では、純粋に楽しんで仕事をすることができたと思います。普段生活しているだけではわからない、新しい領域について、ビジネスを通じて知見を得られるのはとても刺激的でした。また、毎週のミーティングでは、しっかりと進捗の報告をする一方で、フィードバックや提案を、研究員の方や他のインターン生のメンバーと良い雰囲気でお互いに出し合うことができました。メンバーとのコミュニケーションは、アウトプットの質の向上だけでなく、仕事の楽しさにも繋がっていたと思います。そして、自分で研究テーマを設定して調査を行う個人プロジェクトでは、「農業」という自分が興味のあるテーマについて深く掘り下げることができました。特に、調査にあたって実際の農家の方や農業学校関係者の方にインタビューを実施など、デンマークにいなければできないことを自由にやらせてもらえたのは良かったと思っています。また、インターンでは並行して進むプロジェクトが多く、学業・留学生活との両立もあり忙しい毎日でしたが、それによってタスク管理や自己管理の面でも成長することができたと感じています。
インターンシップを通して様々な業界のクライアントの方と関わったり、Web制作やデータ分析、文章執筆などの様々な種類の仕事に触れたりすることで、自分が本当に得意なことは何か、やりたいと感じる仕事とは何かを考えるきっかけになりました。そして個人プロジェクトでは、調査の過程で文献に触れる機会が多かったため、自分の学業における専門性を高めるきっかけにもなりました。完全に自分のやりたいことが見つかったわけではありませんが、今後の日本での学生生活やキャリアの方向性をある程度見極めることができたのではないかと思っています。
私は2018年の9月から2019年の1月まで、約5ヶ月間北欧研究所のインターンとして活動しました。北欧研究所では大きく3つの業務を担当し、主に外部から委託されたコンサル業務として「デンマークの労働事情」「北欧のスマートシティ」、また個人プロジェクトとして「デンマーク人女性の働き方」、そしてFacebook発信業務を担当させていただきました。インターンシップを行ったことは私の留学生活を充実させるものとなりました。
まず仕事を進めるスタンスについては、自分起点で物事を進めることの大切さを学びました。北欧研究所では「自主性」が大切にされています。インターン生が任される委託業務は基本的に自分がやりたいと手をあげて決まります。私はデンマークの教育・労働事情に興味があり、自分の興味を発信することで、委託業務において日本の企業の方にデンマークの働き方をプレゼンテーションする貴重な機会をいただくことができました。仕事を進めるうえでも自分がどのように仕事を進めていきたいかは個人に任せられています。当初、私は限られた時間の中でどのようなアウトプットにするのか、自分が何を大切にして仕事を行うのか悩むこともありましたが、周囲のサポートのおかげで徐々に適応し、「私がどうしたいのか」ということを念頭におき、業務を遂行することができるようになっていきました。このように当事者意識をもって仕事を行えることは大切であり、従業員の自発性が重んじられているデンマークの働き方にも通ずるものがあると感じています。積極的に関与をすれば、様々な挑戦を受け入れてくれる環境が北欧研究所にはありました。
インターンの活動の中で、特に委託業務・個人研究において「デンマークの働き方」について理解を深め、アウトプットとしてホワイトペーパー(調査報告書)を出版できたことが1番の収穫だと思っています。英語の先行文献調査だけではなく、働くデンマーク人の母親にインタビューを実施したり、企業訪問を行ったりすることで、事前の情報収集では見えてこなかった働き方の実情を理解することができました。調査を通じて、デンマークにおける働く仕組みが作られた背景や人々の関与の仕方等、幅広い観点からデンマークの労働事情を探究することができました。
最後に私が楽しく、充実したインターン生活を送ることができたのは、北欧研究所に関わる人々に恵まれたことだと思っています。代表の安岡さんをはじめ、スタッフの方々、また同期のインターン生はそれぞれ異なる興味・個性を持っており、週に1度の会議では多くの刺激をいただいていました。一緒に働くことができたことを嬉しく思っています。本当にありがとうございました。
謹んで新春の祝詞を申し上げます。
昨年は、格別なご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
皆様におかれましては、どのような新年を迎えられているでしょうか。
私は、毎年の恒例となったデンマークでのクリスマス休暇を過ごし、その後は吹雪の中のスキーと暖かい部屋の中での積んでおかれていた書籍の読書三昧の日々で年越しをしました。デジタルデトックスが北欧では注目されてきていますが、ネットの接続がない自然の中に入り込み数日過ごすことの効力を感じた数日でした。
2018年を簡単に振り返りますと、5月にEUで施行されたGDPR(EU一般データ保護規則)やEU-EPAの進展など、現在の不安定な世界政治情勢への対処・巨大IT産業への反発を試みるEUの動き、呼応する日本への期待が注目される年でした。2018年末には、NECによるデンマークの大手SIer、KMD買収のビックニュースが飛び込んできました。皆様もすでにニュースなどでご存知かもしれませんが、デンマーク国内でも大きく報道されました。買収という形ではありますが日本企業であるNECに非常に好意的なコメントが多くみられています。
相変わらず日本と北欧の関係は良好で、その前向きな影響は北欧研究所でも大きく見られています。北欧研究所では、日本・北欧の両側から大きく関心を受け、2018年も活発な研究・調査の一年となりました。未来創造の『戦略デザイン分野』では、北欧のデザインシンキング、参加型デザインやリビングラボの手法をベースにしたプロジェクトを実施しています。日本のIT企業との共同研究として家族のコミュニケーションを支援するITシステムの研究、デンマークのフィンテック企業との新しいプラットフォームのサービスディスカバリー・プロダクトデザイン、社会課題の新しい解決方法として「リビングラボ」研究を進めています。戦略デザインの各プロジェクトは、2019年も継続していきます。『北欧調査分野』では、政治・経済・社会・芸術・技術分野など多岐にわたりサービスを提供いたしました。多様性・多様な働き方、フィンテック, 循環型経済, 地域暖房, スマートシティ, 電子政府の依頼や委託調査など、日本社会の現状を大きく反映し、また小国デンマークの特徴的な点がクローズアップされた年でもありました。『北欧起業・ビジネス支援』では、技術機械分野・日本食分野における日本企業のデンマーク進出支援、法人登記や現地での取引支援など、北欧諸国へのビジネス展開支援を行いました。
いま、世界が揺れているのと同様に、北欧も揺れています。移民排斥、富の不均等、…。「幸せな国」にも課題は多々あり、皆がいつも笑顔でいるわけではありません。しかしながら、北欧には、事実を直視し、議論を続け、最善策の提案を行う勇気を持つ人たちがいます。そして、各所をまきこみ個人個人が自分ごととして考える北欧諸国は、どの国よりも半歩先に解決へと向かっているように思えます。諦めずに最善の策を粘り強く探し続ける、いままで誰も描いてなかった未来を創っていくことを厭わない尖ったイノベーションの宝庫です。北欧諸国の課題解決策や、新しいイノベーション芽を育つ環境創りは、日本にも応用できると考えています。2019年は、そんなイノベーションの方策を数多く報告すると同時に、皆様と一緒に新しくイノベーションを創り出していきたいと考えています。
今後も、北欧研究所は新陳代謝を重ね、新しい知見とを吸収しつつ、今まで以上に多種多様な視点からの北欧情報提供や調査、未来創造を進めていく所存です。 日本からは、北欧は幸せな社会という評価を得ています。私は、14年の北欧生活を経て、本当に幸せに満ち溢れた社会というのは、コミュニティの住人が模索し努力を重ねた結果初めて勝ち取れるのものであり、継続して努力し続けることで維持できるものだと考えるようになりました。私たち北欧研究所は、そんな北欧の試行錯誤から学べることを伝達すること、日本がよりよい幸せな国となるように、日本流の「幸せのかたち」を模索できるような幸せへのヒントを提供していくこと、そして何よりも皆様と一緒に新しい社会づくり、未来創造を積極的に進めていきたいと思っています。
2019年も、北欧研究所(japanordic)に変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
北欧研究所代表 安岡美佳
北欧研究所でのインターンは、たった1ヶ月という短い間でしたが本当にお世話になりました。ここで、インスタグラムの更新と、個人研究をさせて頂きました。
私はデンマークに来た当初から欧州にいる難民に強い興味を持ち、幸福だと言われるデンマークでの彼らの実態について長い間知りたいと思っていました。しかし、その方法が分からずずっと苦戦していました。留学最後の時期になり、友人から北欧研究所にてインターンを出来るという話を聞きました。そこで個人研究として実際の難民支援現場にアポイントメントを取ってインタビュー調査をさせて頂きました。個人研究を通して、長い間気になっていたデンマーク難民、移民政策の近年の動向による影響を調査し、解明でき楽しかったです。特に難民者へのインタビューを通して日本では聞けないこの実際の声を知る事が出来ました。もうデンマークでやり残したことはありません。
この1ヶ月の短いインターンでしたが、多くの事を学びました。企画書やアポイントメントのメールの作成方法、初めての英語でのインタビューの仕方、シンクタンクについて等、私にとって今後の人生で為になる事ばかりでした。何度も、もっと早くに北欧研究所の事を知って、長い期間インターンしたかったと思いました。
たった1ヶ月でしたが、私をインターン生として受け入れて下さり本当にありがとうございました。ここで学んだこの経験は、日本に帰国しても役立てます。
2017年10月から2018年6月まで約9か月間、インターン生として北欧研究所の活動に参加しました。コペンハーゲン大学で留学生活を送っていく上で、普通に暮らしていては得られない知見や経験を得たいと思いエントリーしたのです。
インターンシップでは主に委託業務と、WEBページの更新やSNSの運営を担当しました。委託業務では、デンマークにある企業情報の更新、デンマークの政治や年金制度の情報のアップデート等に取り組んできました。決して楽な仕事ではありませんでしたが、やりがいのある仕事をさせて頂きました。
委託業務への取り組み方が甘くなってしまったり、なかなか進捗を出せずに悩むことも多々ありましたが、代表や他のメンバーの方からの咤激励を活力に取り組んできました。
また、インターンを始めてからずっと、Facebookでのデンマークのニュースの投稿を担当してきました。そのおかげで、デンマークについてかなり詳しくなれたと感じています。投稿内容、時間帯など工夫しながら試行錯誤を重ねてやってきました。体調不良等でミーティングに参加できない時期も欠かさず投稿を続けてきたので、最低限の責任は果たせたと感じています。
このように基本的には自分の担当の仕事や、委託された仕事をこなしてきましたが、自分から提案して始めたこともありました。
北欧研究所のInstagramのアカウントを開設したのです。開設当初は自分から提案したものの何をしていいかわからず停滞していましたが、新しく加入したインターン生と協力し運営をしていきました。まだ思い切って提案してみて良かったと思います。
北欧研究所のインターンを通じて、社会に出る前に普段の学生生活では得られない貴重な経験を積み、成長することができました。この経験が今後、社会に出て働いていく上で役に立つことは間違いありません。
また直接的には業務と関係ありませんが、インターンがきっかけで、個人ブログを開設したり、日本の祭りのボランティアをしたり、日本料理屋でアルバイトをすることになるなど様々な機会を頂き、充実した留学生活を送ることができました。
お世話になった北欧研究所の皆さん、クライアントの皆様、本当にありがとうございました。
2018年5月28日
熊谷佐和子
私は2017年の9月から2018年の6月まで、約8か月間北欧研究所のインターンとして活動させていただきました。北欧研究所では、主に外部から委託されたコンサル業務、個人プロジェクトとして東北地方の東日本大震災復興プロジェクト、個人研究としてのデンマークにおけるジェンダーギャップの調査、北欧研究所のメールマガジンの配信の4つを担当させていただきました。
私にとって今回が初めてのインターン経験ということもあり、最初は戸惑いの連続でした。レポートの書き方やフォーマットの揃え方など、基本的な知識やスキルのなさにも落胆しましたが、いちばん苦悩したのはインターンに臨む姿勢でした。北欧研究所ではメンバーで共同で作業することよりも、割り振られたタスクや自分の興味分野の調査を個人で進めることのほうが多く、週に1回のミーティングで他のメンバーの方に助言をいただくことはできるのですが、そもそも自分がどういうことに興味があるのか、どういう方向性で研究を進めていきたいのか、どういう方法でそれは達成できるのかなど、インターンで求められることは全て「自分」の意向に委ねられていて、それが私にとってはとても難しく、悩みの種でした。それまでの自分を振り返ってみると、確かに日本では大学での授業でも、アルバイトでも、人から与えられた課題や仕事をどうこなすかという視点が行動の中心になっていて、実際に与えられたことをきちんとこなしていれば評価してもらえていたので、自分の頭で「考える」ということを放棄していたなと深く反省しました。インターンを8か月経験した今では、どんな提案をしても「面白そうだね」「やってみなよ」と言っていただける、自由度が高く、年功序列関係なく対等に扱っていただける研究所の環境はとても有難いと思えるのですが、インターンを始めた当初はそのような恵まれた環境を全く活かせていない状態が続いていました。
そんな状況の中、私のインターン活動の転機が11月頃に訪れました。研究所の代表に「もっと自分が興味のあることを自分から提案して、実行してほしい」というお話をされた時に「岩手県盛岡市出身という立場から、デンマークの人にという東北地方の復興状況を伝えるイベントを企画したいです」と初めて自分からやりたいことを発信したのです。すると他のメンバーの方も賛同してくだって、色々な実現方法を一緒に模索していただいたり、日本人のお知り合いの方を紹介していただいたりして、皆さんのご協力のもと、初めて自分が中心となってプロジェクトを成し遂げることができました。また、もう一つの個人活動として、ジェンダーギャップについてインタビュー調査もすることができました。日本にいた時からなぜデンマークは男女平等なのかに興味があったので、デンマーク留学の目標の一つを叶えることもでき、インターンをさせていただいたことでデンマークでの留学生活をより有意義に出来たと思っています。さらに、インターンと並行してアウトプットの練習として書いていたブログも、デンマークでの一つ一つの体験について、きちんと考えて文章化するという習慣づけになり、留学生活にいい影響を与えてくれました。ほかにも、デンマークについてより深く知れた、将来のキャリアプランの展望が見えた、コンサル業務について知見を得られたなど、インターンを通じて得たものは数えきれないほどあり、続けてきて本当に良かったと感じています。
最後になりましたが、お世話になった代表をはじめとする研究所のほかのメンバーの方々はそれぞれの専門分野に精通していたり、海外で様々な経験をされていたりする方が多く、お会いする度に刺激をもらっていました。この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
私は約3か月間北欧研究所でインターンをさせていただきました。非常に短い間でしたが、そこで得られた経験は僕の人生にとってかけがえのないものになったと2つの点で感じています。
1つ目は、インターンを通して「自主性」を磨くことができました。北欧研究所では週1回のミーティングで業務の割り振りや進捗報告を行い、後は各プロジェクトチームや個人での作業になります。そこで求められるのは、ただ指示通りに動くのではなく、業務の内容に沿いながらも、いかにして最高のパフォーマンスを発揮するかを考え、自分から発信していくことだと感じました。そこで私はデンマークに関する報告書を作成した際、デンマークの産業や近年の政策についての傾向を分析し、「この情報を加えた方が良いのではないか」、「こうすると見やすくなるのではないか」、という部分を自身で発信していくよう心掛けました。また個人プロジェクトでは、「デンマークの就労支援」というテーマを掲げ、レポート作成やインタビューの際にアドバイスをいただきながら、僕の考えを尊重していただきました。そのおかげで、デンマークという異国の世界で自分でインタビューを予約し、「これを引き出したら面白いのではないか」と考えながら行動する力が成長したと思います。デンマークでこのような経験をできたおかげで、日本に帰ったらあまり怖いものがないように感じております。自主性を引き延ばしながら、有意義なアドバイスを受けられる環境は非常に恵まれていたなと感謝しています。
2つ目は「やり抜く力」です。デンマーク事情を執筆し、毎回ミーティングで進捗報告をした際には「この内容で本当に大丈夫だろうか」という不安がありました。しかし最後まで信頼してくださり、僕に担当を任せていただきました。そこで自分が納得できるまで情報を追い求めることができました。個人研究レポートでも、インタビュー対象者を自分の思うように獲得できなかったり、時間に焦ったりと悩んだ時期もありました。しかし、それでも「今自分にできることに集中しよう」と、メールの返信が来なかったインタビュー対象者のもとを片っ端から回っていくなど、自分でその状況を打開しようと行動することができました。そして以上のような経験から、最後までやり抜くということは、ただやり抜くだけではないということを感じました。「自分で何をしたいのか」「自分は何をできるのか」という自分の意志が伴って初めて「やり抜く力」というものに意義が出るものだと実感できた気がします。このように成長させていただける環境に出会えたことによって、これから困難な場面に遭遇した際にも、その壁を乗り越えられる気がします。
最後に、私自身3か月経ち、業務のやり方に慣れてきたときに離れなければならず、もっと早くインターンさせていただいていたらと少し後悔しております。代表の安岡さんをはじめとする北欧研究所のメンバーと共に活動できたことを非常に幸せに思います。貴重なお時間をありがとうございました。この経験をこれからの人生でも忘れず、精進していきたいと思います。
Service, 北欧調査, ESSAY 多様性と企業マネージメント
熊谷佐和子
2018年5月28日
デンマークをはじめとする北欧諸国に対して、男女平等な社会というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。実際に私もそのようなイメージを持っており、デンマークがどのようにして男女平等を達成したのかに興味を持ったことがデンマークを留学先に選んだ理由の一つでもあります。デンマークの男女平等さを裏付けるデータの一つとして、OECDが発表している「雇用アウトルック2017」[1]では、男女の収入格差はOECD平均の39.0%に対して、デンマークは24.1%、日本は57.7%であり、日本と比較してかなり労働市場における男女格差が小さいことが読み取れます。
統計的にはデンマークは国際的に見てもかなりジェンダーギャップの小さい国だとがわかりますが、実際デンマークで仕事や子育てをしている人々はどう感じているのでしょうか?それを明らかにするため、デンマーク在住の女性にインタビューをしてきました。
デンマーク第二の都市・オーフスにある女性博物館(Kvindemusset)には、デンマークにおけるジェンダーの歴史・実際に性転換をした人の声・来館者がジェンダーについて考えられるような体験設備があります。今回は同博物館の職員である、Julie Rokkjaer Birchさんにデンマークにおけるジェンダーギャップの現状についてインタビューしてきました。以下、インタビュアーの熊谷とJulieさんの会話形式で記します。(S:熊谷、J:Julieさん)
私は3月にコペンハーゲン大学で、4月にコペンハーゲン桜祭りで東日本大震災の被災地の現状について、岩手県盛岡市出身という立場からプレゼンテーションをさせていただきました。
イベントを開催するにあたって、資金集めや会場探しなど、文字通り一からのスタートでした。イベントを自分で企画・運営するということが私にとって初めての経験だったので、本当に右も左も分からない状態で、初めの頃はイベント運営に協力していただいていた研究所の他のメンバーが提案してくださったアイデアに頼ることが多く、主体的に案を出して動く、ということがなかなか出来ずに苦労しましたが、次第に自分がどうしたいか、という軸でイベントに向き合えるようになりました。
プレゼンテーションの内容に関しても苦心しました。私自身東北出身ではあるのですが、私が住んでいたのは内陸部だったので同じ岩手県内でも沿岸部で津波を経験した人に比べれば受けた被害は非常に小さく、「東北出身だけど被災者ではない」という立場からどんなアプローチで情報発信するべきかということ、日本国内よりも国外でのほうが福島の原発事故に対してネガティブなイメージが未だに根強く残っていること、震災経験者のお涙頂戴的な、感動物語として受け取られないためにはどうしたらよいかということ、そもそもデンマークに在住している人がこのトピックに対して興味を持ってくれるのかということ、などの色々な課題に対処しながらイベント内容を思案しました。
イベント当日は、上述したような不安をよそに、コペンハーゲン大学・桜祭り共に多くの人が集まり、真剣に私の話に耳を傾けてくれ、中にはプレゼンが終わった後に個別に感想を伝えてくださったり、質問しに来てくださったりする方もいて、たくさんのフィードバックをいただくことができました。「被災地の現状を知れてよかった」「東北へどう関わっていくべきかがわかった」などのあたたかい声を寄せていただいた一方で、特に福島に関するこれまでの負のイメージを覆すのはやはり難しいな、ということも実感しました。風評被害などを含めて、震災から7年が経過した今でも復興はまだまだ達成されていないことを痛感したので、このプロジェクトは終わってしまいましたが、これからも復興の状況についてアンテナを張り、東北について発信することは続けていきたいなと思いますし、東北出身者としてそうしていく責任があると考えています。
(3月15日、コペンハーゲン大学でのイベントの様子)
イベントの本来の開催目的からは少し外れますが、イベントの企画していく中で研究所のメンバーにサポートしていただきながらデンマーク在住のの日本人の方と知り合えたのも大きな収穫でした。日本から遠く離れたデンマークという国で、日本人の方が様々な形で暮らしているというのを知れたことは、ちょうど自分自身の将来について考えていた時期とも重なっていたので私にとって非常に有意義でした。図らずも期待以上の成果がこのプロジェクトを通じて得られ、よかったと思っています。
「被災地のために何かできないか」というのは日本にいた頃からずっと考えていたことだったので、今回このような形で、そしてデンマークという地でアウトプットさせていただくという貴重な機会をいただけて本当に感謝しています。最後になりましたが、当イベントに関わってくださった全ての方に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
新年あけましておめでとうございます。
皆様、良い新年を迎えられたでしょうか。
2017年は、世界のいく先がより不透明に感じられる種々の出来事が相次いで起こり、北欧の小国も世界的な流れに翻弄されているように思われることが多々ありました。移民や難民の問題も解決の糸口が出ているとは言いがたく、民族間の対立もより深まってしまっているような印象も受けます。一方で、日本とデンマーク間を見ておりますと、また違った国際的な動きが見られたと言えます。2017年は、デンマークと日本の国交樹立150周年として、日本とデンマークを舞台に、外交・産業・芸術・学術のあらゆる分野で約70もの交流やイベントが実施され、デンマークにおける日本への関心もより高くなっているように感じられました。金唐革紙のワークショップや日本酒の紹介イベントを始め、いくつかのイベントには北欧研究所も関わり、微小ながら両国のより良い関係の構築に貢献することができたのではないかと感じています。
北欧研究所は、引き続きデンマークの文化政策、ビジネスとアートの融合、フィンテックなど、興味深いイノベーションのタネに注目し、今まで以上に多種多様な点から北欧情報を調査分析し、日本と北欧のよりよい関係性に貢献していきたいと思っています。さらに、日本と欧州のEPAの締結が見込まれ日本への関心が高まっている現在、北欧の人達の日本への興味の種が育って行くように、文化・経済・政治の分野からサポートをしていく所存です。
日本からは、北欧は幸せな社会という評価を得ています。2017年には、デンマークでよく使われる「ヒュッゲ」が世界的な注目を浴びました。私は、13年の北欧生活を経て、現在、本当に幸せに満ち溢れた社会というのは、コミュニティの住人が模索し努力を重ねた結果、初めて勝ち取れるのものであり、継続して努力し続けることで維持できるものだと考えるようになりました。私たち北欧研究所は、そんな北欧の試行錯誤から学べることを伝達すること、そして、日本がよりよい幸せな国となるように、日本流の「幸せのかたち」を模索できるような幸せへのヒントを提供していきたいと思っています。2018年が、多くの人が、幸せの形をそれぞれの社会がそれぞれなりに模索し始めた年と、のちの社会的で言われるようなそんな新たなきっかけになってほしいと切に願っています。
2018年も、北欧研究所(japanprdic)に変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
北欧研究所代表 安岡美佳(やすおか みか)
昨年の9月から12月までの3か月間インターン生としてお世話になりました。
私がインターンを始めた理由は、ただ日々生活して感じるだけではなく、デンマークについてより深く知りたいと思ったからでした。
結果、デンマークについて知識を得たのはもちろんですが、ただデンマークはいい国だっただけで終わっていただろうことが、インターンをしたことによってその背景にはどういった取り組みがあるのか、自分はデンマークから何を学べるか等、今まで興味のなかったことや新しい考え方を学ぶきっかけにもなりました。
例えば移民や難民について調べた際に、以前までこれらの分野に興味がなかったものの、調べていくうちに興味が出てきて、実際ドイツやデンマークの人たちに彼らを受け入れることをどう思うのか聞いたことで、日本では感じることができなかった思いを知ることが出来ました。
自分の興味のあった自動車の分野でも、自分がしたいことをどんどん挑戦させてもらえたことで、自分が知りたかったもの以上のことを得ることが出来ました。
住んでいた町から毎週コペンハーゲンに行くのもひとつの楽しみでしたが、日本から様々な思いでデンマークに来ている方たちと交流することもとても刺激的でした。
私自身日本が好きで今後も日本に住んでいたいと思っています。しかしこうやってたまに海外で生活したり、全く違う考え方を持っている人たちと関わることで、自分自身の成長に繋がっていくとも実感しています。
今回、インターンを通してそういったことを学ぶ機会を本当にたくさん与えてもらいました。3か月という短い間でしたが、得たものは多く後悔なく日本に帰国できました。今後は日本でこの経験を生かしていきたいと思います。
短いながらもご指導、アドバイス、日々の生活の何気ない話まで、素敵な機会をいただき、本当にありがとうございました。
2017年3月から12月までの約10か月間、北欧研究所でインターンとして働いた。
インターンを始めたきっかけは、以前コペンハーゲン大学に留学し、同じくインターンを行っていた先輩に話を聞いて興味を持ったことであった。インターンを通して新しい経験をし、人脈を広げ、何よりデンマークについて深く知ることができると考えた。北欧研究所での経験は私にとって新しく刺激を与えてくれたものばかりであり、多くのことを学び、私よりもはるかに人生経験が豊富な人や幅広い分野に興味を持った人と出会う機会を与えてくれた。通常の業務は主に、企業から調査依頼を受けて行う委託調査、Facebookページでのニュース更新、デンマークの社会や文化に関して個人の興味・関心に沿って調査する個人テーマの三つに分かれた。それまでインターンをした経験がなかった私は、インターンとして働くということはどういうことかを知り、さらに調査を進める中で、文献やウェブサイトの調査方法、レポート・エッセイの書き方、デンマークの社会制度について学び、それを日本の現状と比較・検討して問題意識として捉えることもあった。またエッセイ執筆を通して、今までは文章を書くことが苦手だったが、文字に起こすことで自分の考えを整理できそれに対する理解が深まることを学んだ。
様々な活動を通して一番印象に残っているのは、金唐紙のワークショップである。そこで修復師という仕事や日本の伝統工芸の現状について知った。私でも知らなかった日本の文化・技術が遠い国デンマークで注目を浴び大切に保護されている現状に驚き感銘を受けたとともに、世界に誇るべき日本の文化や伝統を、日本人を含めより多くの人に知ってもらいたいと強く感じた。そしてデンマークの文化政策・制度に加えて保護活動をする修復師についても興味を持ち、その後個人的に調査するに至った。
さらに長期休みには、無理を言ってお休みを頂き、ヨーロッパ一人旅、ボランティア活動を経験する機会を頂いた。そこでは、大学での学びを通しては得ることができなかったこと、特に、自分自身の好きなこと、得意なこと、苦手なこと、長年悩みとして抱えていたことに気づき、時間をかけて向き合うことができた。
北欧研究所での業務は、担当を割り当てられて取り組むものもあるがほとんどは「やりたい」と手を挙げれば、周囲のサポートを受けながら自分で時間を管理して取り組みやすい環境にある。さらに、幅広いコネクション、長年の経験や知識、ノウハウが備わった環境において、自分の興味・関心に沿ったことを調査できることはとても恵まれているし、貴重であると思う。その中で、時間をどう活用してどれだけ自分のやりたいことを実行できるかはその人次第で、限られた時間の中でも行動に移して努力したものは結果として実を結ぶことを実感した。10か月間は長いようであっという間であったが、失敗や葛藤も経験しながら行動して学んだことは、自分にとって何よりも大きな収穫となった。
最後になりますが、長年の経験やノウハウを駆使して私たちに新しい体験をする機会を与えてくださり、お忙しい中時間を割いてレポートやエッセイのチェック、アドバイスをしてくださったスーパーバイザーである上司の方には感謝しかありません。そして、北欧研究所の活動を通して出会った方々、一緒にインターンとして働き、モチベーションを高く持ち楽しい時間を共有してくださった皆様、本当にありがとうございました。
9月18日から20日にかけてコペンハーゲンで行われた、日本の伝統工芸「金唐紙」のワークショップに北欧研究所のお手伝いとして参加した。日本の金唐紙研究所で活動する職人の池田氏と奥様がデンマークに招待されて、デンマークで活動するアーティストや学芸員、修復師の方々、一般人に向けて、実際に金唐紙制作の作業工程が体験できるワークショップ、金唐紙の歴史についての講演を行った。
デンマークで伝統工芸や建造物等の修復を行う修復師の団体が今から一年ほど前、コペンハーゲン中心部のKongs Nytorvのお屋敷で日本のものと見られる金唐紙の壁紙を発見した。金唐紙についてはどのように作られて西洋に技術が渡ったのか等正確な情報が得られておらず、更に知識を得たいという目的のもと今回のワークショップ実現に至った。金唐紙を制作するには、和紙に金箔を張り付けたものを竹や花がモチーフとなって彫刻されている木製の型に押し付けて、ブラシを用いてたたき、模様を紙に押し付ける。模様が浮き出てきたら最後に色をつけ、漆を塗って乾かして完成。私も初めて体験させてもらったが、特に紙に模様をつけるためにブラシでたたく工程では、長時間ブラシで叩き続けなくてはならないのと、ブラシが紙に対して垂直に当たらなければきれいに模様が浮き上がらないので、逐一確認しながら叩かなければならない点が大変であった。模様が描かれている木製の型は、新しい作品を制作する場合や修復の際に型が見つからないものや古い型で使えないものであった場合に、池田氏がご自身で彫刻するようである。今回は池田氏が日本からいくつか持参したものを使用した。
このワークショップに参加するまで金唐紙を見たこともなく知識もなかった私にとって、遠く離れたデンマークで日本の伝統技術を守ろうと興味を持ち、保存のために活動している団体が存在すること、そして実際に作品が何百年も保存されていることに大変感銘を受けた。さらに、デンマークの修復師の活動や国を挙げた伝統芸術への支援制度の充実性に興味を持ち、日本の伝統工芸継承の現状や問題点、将来についても考えさせられることが多くあった。特に金唐紙は各工程で日本独特の和紙や漆が使われていて、例えば最初の行程で使う和紙に関しては、日本原産のものは丈夫で、木製の型に押し付ける際にも破損しないような強さを持っているが、海外のものは日本のものに比べて薄く、それほど丈夫ではない。実際に、デンマークで壁紙として使われている金唐紙の修復の際には、海外のものが付け足されている場合もあると修復師の方から伺った。デンマークの修復師の方々はその点も理解していて、日本の和紙や漆に対する知識も持ち合わせており、できるだけ日本のものを使おうとしている姿勢を感じた。日本の伝統技術が広く海外にまで伝わりより多くの人の目に触れられることは、製作者にとっても私たち日本人にとっても誇り高く喜ばしいことであると考える。しかし、正しい知識や技術が何らかの過程で伝わった先にとって都合がよく便利な形に変化されてしまったり、製作者や伝統継承者の作品に込めた想いが本来とは違う形で受け取られてしまう可能性も考えらえるかと思う。その中で、今回のように実際に技術を継承する方と修復師の方々が直接交流し、本来の技術に対する知識を深められる場を設けることは、今後伝統技術を継承していく上でとても重要な役割を果たすと感じた。また、今回の池田氏のように技術を伝える側にとっても、日本の伝統芸術という視点から見たときに、何が正しく理解されていてどのような点で誤解が生じているのか、これからの継承に関する課題や解決策を考えるといったような問題意識に繋げられると感じた。
デンマークでは修復師を養成する学校があり、厳しい審査を通過したアートスクールの学生が伝統工芸や建築物の修復を行ったり、政府が資金を援助して国全体で芸術を継承していこうという動きがある。しかしながら日本を考えてみると、伝統工芸の後継者の人手不足や社会の関心の低さ等の問題が山積している。さらに、世界の中で見ても政府からの助成金は少額で、支援に力を入れているとは言えない。今後デンマークの修復師の活動や歴史、教育システムについて調査していく中で、日本の伝統工芸の現状、問題点への解決策とを関連付けて考察していきたいと考える。
7月の後半から八月の後半まで約一か月、長期休暇を利用してデンマークのステンズバックという地域でボランティアをした。春セメスターの授業が6月で終わり、約3か月の長期休暇を、日本や留学先の大学生活ではできないようなことを経験し有意義なものにしたいと考え、ボランティアをすることにした。
ボランティアをしていた地域はユトランド半島の南、ドイツとの国境に近くに位置し、留学生活で普段住んでいるコペンハーゲンとは全く違う、正直に言って超がつくほどの田舎であった。周りには牧場や森が広がり、一番近くのスーパーまでは歩いて40分はかかるほどである。ボランティアをしていた施設は、ヨガやピラティス等をしながらベジタリアン生活を通して心と体の健康を目指すというコンセプトのもと、毎週20人ほどのゲストを受け入れ、ゲストのために食事の準備をしたり掃除をするのが主な仕事であった。この施設を選んだ理由は、私のほかにボランティアが多くいること、世界中からボランティアが集まっていたこと、ボランティア同士のアクティビティが活発で自然の中で暮らせること、ベジタリアン生活を経験して見たかったことであった。ボランティアは私のほかに15人ほどいて、デンマークのほかに、スペイン・オランダ・レバノン・メキシコ等世界中から集まってきていた。一日約5時間の仕事でおおまかに朝・昼・晩の三つのシフトに分かれて働いた。さらに、仕事が終わった後や夜にはみんなで集まってゲームをしたり、映画を見たり、パーティをしたりと交流が活発であった。
この施設では毎朝ボランティアが全員集合してミーティングをした後、天気が良い日は外で、雨や天気が悪いときは体育館の中で、皆で輪になって手をつなぎ、一人ずつその日の気分(幸せ、悲しい、良く眠れた、疲れている等)を言うのが日課であった。はじめはこの習慣に驚きと戸惑いを感じ、何を話せばよいのかわからなかった。自分の本当の気持ちに向き合おうとはせずに、当たり障りのないことや皆が聞いて無難だと思うこと(よく眠れた、今日も仕事を頑張りたい等)を話していた。それはおそらく、自分の本当の気持ちを話したら周りがどう思うかを気にしていて、自分の気持ちに向き合うことを避けていたからだと思う。思えば私は今までの人生で、他人の気持ちばかりを気にして我慢した結果、自分の本当の気持ちがわからなくなってしまうことがあり、それが悩みでもあった。たとえば、数人で分担して作業をするときに、自分が何をしたいかよりも他の人が何をしたいかを先に聞いて、自分がやりたくない役割でも引き受けてしまう。最初はその役割をこなすものの次第にそれが嫌になってきた場合でも、自分の気持ちを言ったらどう思われるか心配したり、自分が我慢することによって周りが上手くいくのなら自分の気持ちは言わなくても良いだろうと自分の中で完結させてしまったり、また時には周りはどうして気づいて交代しようとしてくれないのだろうかと周りのせいにして一人で考え込んでしまうときもあった。覚えている限りかなり幼い時からこの癖が体に染みついていたので、大人になるにつれて自分が本当は何がしたいのか自分の気持ちがわからなくなってしまうことが多々あった。しかし約一か月間毎朝この習慣を続けていくうちに、次第に自分の気持ちを他人の前で素直に表現し、言葉にできるようになった。それは、自分の気持ちに正直に向き合い自分の気持ちを尊重することは大切だということを学んだからである。今までは自分の気持ちを正直に言って周りに心配をかけてしまったり気を遣わせてしまうのは悪いことだと思っていたが、自分が何も発信しないで一人で抱え込むことによって我慢したり嫌な気持ちになることが、逆に他人に気を遣わせたり、周りにその悪い雰囲気が伝わってしまうということに気づいた。それまでは、「自分の視点から」他人の気持ちに配慮して気を遣うということしかできていなかったのが、今では「他人の視点から」その人の気持ちに寄り添うことができるようになったと感じる。そのことに気づき、自分の気持ちに本当の意味で向き合い、素直にそれに従うことができるようになるのは私にとって簡単ではなかったが、周りのボランティアの人が支えてくれたおかげで自分の凝り固まった考え方を変えることができた。自分が今まで悩んでいたことを話すとみんな親身になって相談に乗ってくれ、アドバイスをくれた。こんなことで悩むのは恥ずかしい、今更正直に言う必要もないと思っていたのが、みんなが私のありのままの姿で受け入れてくれて、自分が一番大切なんだよということを教えてくれたおかげで、正直な自分を表現することに抵抗を感じなくなった。
このボランティアの経験では、新しい視点を得て、何よりも自分自身がさらに成長できたと感じられた。素晴らしい人たちと出会うことができて、彼らの良いところをたくさん吸収できたのではないかと感じている。たくさん相談にのってもらった中で一番印象に残っているのは、何か選択をするときに自分が何をしたいのか、本当の気持ちがわからなくなったときに、自分に問いかけるべきことがあるということ。それは二つあって、まず、なぜ自分はそれをしたいのか、そして次にそれをしたら自分はどう感じるのかということである。その時に注意するのは、「こうするべき」や「こうしたら他人が喜ぶから」等、自分の気持ちではないことは答えにはしてはいけない。普段からこれが自然にできている人にとってはわざわざ考えなくても済むようなものであると思うが、私にとってはこれを自然にできるようにするには練習が必要であった。しかしその習慣をつけることによって自分の思考方法が変わって、今までとは違った視点を持って物事を捉えられるようになり、些細な事でも我慢することなく自分に正直に行動できるようになった。ボランティア活動では多くの出会いと新しい発見があり、自分の成長へとつながる価値あるものとなった。
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北欧研究所は、デンマークコペンハーゲン市の修復士からの依頼を受け、日本における金唐革紙調査サポートを2016年秋、その後、日本の有識者を招聘しての金唐革紙の制作ワークショップのイベント立案、2017年9月18日から20日のイベント通訳を行いました。 More
2016年の日本におけるデンマーク映画の上映数は3本。他国との共同製作作品を合わても10本だ。しかもそのほとんどが単館系作品であり、マニアックな層をターゲットとしている。デンマークの映画なんて見たことないという日本人も多いだろう。しかし、実際は、奥深い歴史を持ち、同時に、今日のドキュメンタリー映画界に大きなイノベーションを起こし続けている。今回は、デンマーク映画を語るのに欠かせない5つのキーワードをもとに日本人にとってミステリアスなデンマーク映画の世界を紐解く。 More
デンマークに住み始めて、文化、特に芸術面に関する事柄で日本と大きく違うと感じることが多々あった。例えば、多くのデンマーク人は特に芸術を専門にしていなくても芸術に対する知識が豊富で芸術に対する関心・意識がとても高い。また、美に対するこだわりも強いようで、例えば私の周りの友人の多くは普段の何気ない、自分のために作る昼食一つに対してもとても見栄えを気にする。一般のデンマーク人が描いたスケッチひとつにしても、日本人には思いつかないような発想や色使いで、どうしてこのような違いが生まれるのかだろうと疑問に思うことがあった。そのような中、デンマークの文化政策について調べるうちに、感じたことや気づいたこと、それらの答えの手がかりとなり得るものがいくつかある。
まず、日本との大きな違いを感じたのは、デンマークの文化政策の根底に「文化活動に触れる機会はみなが平等に持つべきである」という概念が存在していることである。文化活動に触れる機会がみなに平等に与えられるように政策がデザインされている。例えば、デンマークでは芸術に関する主要教育機関の授業料が基本的に無料であり、入学に際しては試験を受けることが条件となっている。対して日本では、芸術専門の学校に行くとなれば普通科の学校に行くよりも多額の授業料が必要となる。この点、デンマークでは環境や境遇によらず、みなが等しく芸術活動に関わる機会が与えられていると言うことができる。さらに、デンマーク人は平均して個人が美術館や図書館といった文化施設に足を運ぶ回数が多く、ここからもいかに芸術に高い関心を持っているかがわかる。結果的に普段から芸術に携わる機会が多くなり、多くの知識を得ることができるのだと考える。しかしながら、”Compendium cultural policies and trends in Europe”によると、高所得者と低所得者の間には文化施設に足を運ぶ頻度にいまだ差があり、その差を埋めることができるような政策を取り入れることも今後の課題の一つとなりそうである。
加えて、デンマークの文化政策にかかる予算は世界の中でもトップクラスのレベルで多い。それらは文化施設や重要文化財の修復費や芸術活動に関わる宣伝費、伝統芸術の保護費そして芸術活動やアーティストを支援する費用などに充てられている。デンマークでは1960年代に「アームスレングスの原理」というものが文化政策に用いられるようになったが、これは芸術に政府や政治家の干渉が及ばないようにするための決まりである。よって、デンマーク政府は予算を使って積極的にアーティストの育成や活動、さらに芸術を後世に継承していくことにも力を入れている。その例として、多くの人が訪れる美術館や博物館を重要文化施設に指定して、それらと私的スポンサーとの連携を深めることを支援している。その形態はさまざまだが、スポンサーに免税制度を適用してアーティストの活動を支援するように促すこと、公的財団を利用してアーティストに補償金を与えるなどがこれに当たる。日本の場合を考えてみると、まだまだ国全体で文化財を守っていくという意識が低いように思われる。そのため、日本政府が文化政策にかける予算はデンマークと比べてとても少ない。これはおそらく、日本人の考えの中には「文化財は国の遺産であり、国民が協力して守っていくべきである」という発想が浸透していないからであると思われる。これとは対照的に、デンマークでは政府が中心となって芸術への支援を行い、文化を継承していくための仕組みが確立されている印象を受けた。日本ではもしかしたら「芽を摘まれてしまうかもしれない」アーティストも、デンマークでは活躍できる可能性がより確保されていると言えるかもしれない。先で述べたデンマーク人と日本人の間の美的感覚の違いについても、世間の評価を気にすることよりも自分の美学を貫く姿勢が身についていることから生じるものかもしれないと思った。
今回の調査は、デンマークと日本の文化について私が日常感じていたような小さな違いから国家の方針といったような大きな違いについて考える機会となったと同時に、デンマーク社会を更に知る良いきっかけとなった。
(鵜飼麻未、北欧研究所インターン)
参照:
私は北欧研究所で約半年間、インターンシップとしてお世話になりました。
デンマークに来るまでの北欧に対するイメージは、税金が高い、福祉国家、寒い地域などと抽象的なイメージでした。しかし、実際にデンマークで生活し、そして北欧研究所という場所で、様々な分野の調査をするにつれ、本当の北欧デンマークが垣間見えた様な気がします。 More
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北欧の国デンマークは、再生可能エネルギーの普及が進んでいることで有名だ。その中心を担っている風力発電は2015年には総電力消費量の42.1%を賄うまでに成長した(ENERGYNET.DK)。世界的にもクリーンな国として知られるデンマークだが、2012年政府はエネルギー供給の100%を2050年までに再生可能エネルギーで賄うという目標を掲げる長期エネルギー計画を発表した。この目標を実現するためには、再生可能エネルギーの普及といった今までのような政策だけでは難しい。鍵を握るのは電気自動車(EV)だ。