東北復興支援プロジェクトを通じて得たもの:熊谷佐和子

私は3月にコペンハーゲン大学で、4月にコペンハーゲン桜祭りで東日本大震災の被災地の現状について、岩手県盛岡市出身という立場からプレゼンテーションをさせていただきました。

 

イベントを開催するにあたって、資金集めや会場探しなど、文字通り一からのスタートでした。イベントを自分で企画・運営するということが私にとって初めての経験だったので、本当に右も左も分からない状態で、初めの頃はイベント運営に協力していただいていた研究所の他のメンバーが提案してくださったアイデアに頼ることが多く、主体的に案を出して動く、ということがなかなか出来ずに苦労しましたが、次第に自分がどうしたいか、という軸でイベントに向き合えるようになりました。

 

プレゼンテーションの内容に関しても苦心しました。私自身東北出身ではあるのですが、私が住んでいたのは内陸部だったので同じ岩手県内でも沿岸部で津波を経験した人に比べれば受けた被害は非常に小さく、「東北出身だけど被災者ではない」という立場からどんなアプローチで情報発信するべきかということ、日本国内よりも国外でのほうが福島の原発事故に対してネガティブなイメージが未だに根強く残っていること、震災経験者のお涙頂戴的な、感動物語として受け取られないためにはどうしたらよいかということ、そもそもデンマークに在住している人がこのトピックに対して興味を持ってくれるのかということ、などの色々な課題に対処しながらイベント内容を思案しました。

 

イベント当日は、上述したような不安をよそに、コペンハーゲン大学・桜祭り共に多くの人が集まり、真剣に私の話に耳を傾けてくれ、中にはプレゼンが終わった後に個別に感想を伝えてくださったり、質問しに来てくださったりする方もいて、たくさんのフィードバックをいただくことができました。「被災地の現状を知れてよかった」「東北へどう関わっていくべきかがわかった」などのあたたかい声を寄せていただいた一方で、特に福島に関するこれまでの負のイメージを覆すのはやはり難しいな、ということも実感しました。風評被害などを含めて、震災から7年が経過した今でも復興はまだまだ達成されていないことを痛感したので、このプロジェクトは終わってしまいましたが、これからも復興の状況についてアンテナを張り、東北について発信することは続けていきたいなと思いますし、東北出身者としてそうしていく責任があると考えています。

(3月15日、コペンハーゲン大学でのイベントの様子)

 

イベントの本来の開催目的からは少し外れますが、イベントの企画していく中で研究所のメンバーにサポートしていただきながらデンマーク在住のの日本人の方と知り合えたのも大きな収穫でした。日本から遠く離れたデンマークという国で、日本人の方が様々な形で暮らしているというのを知れたことは、ちょうど自分自身の将来について考えていた時期とも重なっていたので私にとって非常に有意義でした。図らずも期待以上の成果がこのプロジェクトを通じて得られ、よかったと思っています。

 

「被災地のために何かできないか」というのは日本にいた頃からずっと考えていたことだったので、今回このような形で、そしてデンマークという地でアウトプットさせていただくという貴重な機会をいただけて本当に感謝しています。最後になりましたが、当イベントに関わってくださった全ての方に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。