インターンを振り返って

デンマークの社会はどのような仕組みになっているのか。高い税率で実現する福祉サービスはどこまで充実しているのか、また北欧、ヨーロッパという枠 組みの中で政治、経済的にどのような立ち位置にあるのか。私は留学直前までデンマーク事情についてほぼ知識がないまま入国したが、風が強く、見渡す限り山 がない、すれ違う人は身長2m近く、あらゆる道路に自転車専用道が整備されているなど、あまりにも日本との違いを多く感じ、この国についてより深く知りた いと思った。

法学・政治学を専攻する私にとって、社会システムについて深く知る機会を得られるインターンには非常 に関心があった。特に私は将来、公共政策を実現する立場から、日本の持続可能な産業基盤を維持することに貢献したいと考えている。そのため、大学での授業 だけでなく、北欧研究所での調査活動の一環として、社会に暮らす人、ビジネスをする人など様々なアクターから情報を得ることは、自らの知見を広げ、その土 地に適した戦略を考える上で重要な意味を持っていた。

 

私が主に調査した分野は大きく政治、経済、ビジネスに分けら れる。政治の面では、主に時事ニュースを扱った。私が留学を開始した時期の2014年10月には、前経済内務大臣のマルグレーテ・ヴェステアー氏が欧州委 員会の理事に選出されたことを受け、その背景、今後の動向予測について調査し、記事に起こした。また環境政策と関連させて電気自動車の登録データや、自転 車道整備の進展状況のまとめも行った。経済面では2008年の金融危機以降の財政再建、経済成長率との関連性について調査をし、福祉国家と呼ばれる裏で税 の確保と分配のバランスについて資料を作成した。ビジネス面では、風力発電への投資活動から、盆栽のインポーター、化粧品や健康サプリメントのマーケティ ングまで様々な分野において、電話での聞き取り調査や店舗に赴いて担当者や店員から話を伺った。

 

さらに、北欧研究 所の電子媒体のうち、生活情報を提供する「コペンライフ」の記事執筆も行った。その一環として、自然エネルギー100%の自治体として知られるロラン島へ は、有機農業、風力発電など自然エネルギーの活用の視察に赴いた。また電子雑誌の発行に向けて、デンマークの国技であるハンドボールの文化やシステムを記 事にするため、プロリーグでプレーする日本代表主将の本多恵選手を訪問するなど、貴重な機会を得られた。

 

このよう に、多岐にわたる分野に取り組むことは、各セクターが社会とどのように関連して影響を及ぼし合っているかということを知ることに繋がる。仮にある土地で長 く評価される公共政策を別の土地に適用しても、歴史・文化・地理的条件の違いにより、うまく機能するとは限らない。その意味で、社会の持続可能性を考える 上で社会課題の有効な解決策を生みだすためには、分野横断的に社会を捉え、様々な構成要素の行動や利益を分析する必要がある。

 

ウェ ブ調査や、現地で活躍する人とのコミュニケーション、インタビューで得た情報を記事としてまとめることは、主体的にその土地のリアルを知覚し、外部に向け て発信することである。その過程で、限られた時間内で必要な情報を取捨選択し、伝えたい内容に一貫性を持たせる作業は困難であった。ただそれは応用次第 で、私の場合、焦点を絞って社会課題を明確化し、段階を踏んだ長期的解決策を見出す過程と共通すると感じた。約9ヶ月のインターン活動で、様々な人と出会 い、多くの知見と実地経験を得ることができ、より広い視野で物事を捉えられるようになったという意味で、自己を成長させる貴重な機会となったと感じてい る。