幸福とは? Vol.5 デンマーク人のギャップ・イヤーから見る幸福観

 『幸福とは? ギャップ・イヤーについてのインタビュー』という記事を執筆するにあたり、3人のデンマーク人に彼らの自身経験や、ギャップ・イヤーに対する考え方をインタビューした。現在、彼らはギャップ・イヤーで培った経験、キャリア、そして、考え方を存分に活かし、自分たちの道を力強く突き進んでいる。先日、国連の世界幸福度報告[1]が発表した調査で、デンマークが幸福度第1位の国に返り咲いた。デンマーク人の幸福度が高い理由として、とりわけ若者にはギャップ・イヤーが関係しているのではないかと筆者は考えている。

 

 

多様な教育制度

 

 デンマークの社会的制度やそれが作り出す雰囲気が、彼らにギャップ・イヤーを取りやすくしている。日本の教育制度は線形である。小学校、中学校、高校・高等専門学校、そして専門学校・大学進学、または就職というキャリアが一般的である。一方、デンマークの教育制度は非常に多様である。高等教育以外に、例えば、普通科目の知識と技術を向上させ、彼らの職業と可能性を伸ばすことを目的としている基礎成人教育、労働市場の需要に合わせて職業訓練を行うこと職業訓練成人教育、試験を行わず修了後に資格も与えられないデンマークの伝統的な教育過程である教養成人教育がある[2]。このように教育機関の多様性に伴う社会的寛容性が、進学や就職に対する世間の目を気にせず、ギャップ・イヤーを取りやすい環境を作り出している。

 

 

デンマーク人の若者がギャップ・イヤーで行うこと

 

 ギャップ・イヤーとは、もともと大学就学前後の1年をめどに、正規教育から離れてテーマを持って「ボランティア・インターン・国内外留学」等で過ごす英国で生まれた社会慣行である[3]。日本でギャップ・イヤーという言葉を聞くと、主に留学や海外ボランティアが想定されるかもしれないが、デンマークにおけるギャップ・イヤーの選択肢は非常に多様である。Vol.1のインタビューに応じてくれたヘンリックさんは、ギャップ・イヤー期間中、デンマーク国内でアルバイト後、日本での語学学習に加えて、日本国内のいたるところを旅行した。一方、Vol.4のインタビューに登場したヨセフィネさんの場合、ギャップ・イヤーでイスラエルでのアルバイトやボランティアを楽しむ一方で、デンマーク帰国後は、ヨーロッパを旅行していた。つまり、複数の選択肢をカスタマイズすることで、自分にしかできない経験を自分でデザインするのである 。

 

 

ギャップ・イヤーで得られること

 

 3人のインタビューから導出された、ギャップ・イヤーを取得することで得られる共通点について次に考察する。1つ目は、精神的余裕である。例えば、ヨセフィネさんのように、大学進学に対するプレッシャーを感じている場合、あえて教育制度から一時的に外れ、旅行や自分がやりたいことに挑戦することで、心身ともにリラックスすることができる。その状態が本当に自分の将来のキャリアについて、俯瞰的に考える心理状態や環境を作り出し、決断力を高めることができる。2つ目は、柔軟性である。1~2年のギャップ・イヤーの期間中に、アルバイトや海外長期滞在を通して、様々なヒトと出会い、見たことや聞いたことのないモノに触れ合うことができる。そのプロセスの中で、今まで抱いていた自分の古い価値観を変え、様々な経験を通して得た考え方で物事に多方面から向き合うことができようになる。3つ目は、自立心である。デンマークでは、18歳で法的に成人であることが認められる。それに伴い、Vol.2でインタビューしたイダさんは両親に頼らず、バイトで貯金した資金で、日本へ1年間滞在した。お金を稼ぐことを学び、そのお金を自分のために使うことで、経済的自立心を育む。

 

 

ギャップ・イヤーを通して、日本人が幸せになるためのマインドセット

 

 重要なマインドセットは、2つだけである。まず、リラックスすること。例えば、必ずしも大きな目標を持ってギャップ・イヤーを取る必要はない。事実、筆者がインタビューした3人のコペンハーゲン大学の学生全員が、ギャップ・イヤーを取る前に、大きな夢や目標があったわけではない。ギャップ・イヤーを過ごす中で、新たな目標を見つけ、帰国後自分たちの道を力強く突き進んでいる。筆者自身も、コペンハーゲン大学留学に交換留学中で、留学前と今では自分の目標は大きく変化した。リラックスした状態で 新たな環境に身を置くと、本当に自分がしたいことは見えてきて、自分が今まで持っていた価値観は変化していくのである。次に、自分の軸を見つけること。デンマーク人は他人と自分のキャリアを比較しない。比較しても無意味だと分かっているからだ。 『あなたは何をしている人ですか?』デンマーク人と出会うと、必ずと言って良いほど聞かれる質問である。この問いは、他者との比較によって答えられるものではない。ギャップ・イヤーとは、「自分」という軸を探すための旅のようなものである。その旅の中で、ギャップ・イヤーを取ったデンマーク人は「自分だけの軸」を確立する。

 

 

 『自分の軸とは何だろう?』この問いを答えることができるようになった時、ギャップ・イヤーで培った経験はあなたの将来を導く素晴らしいものになっていると筆者は信じている。特に何をして良いか分からないあなた。少しリラックスして、あえて日本の教育制度から外れることで、今まで想像もできなかった自分のキャリアや幸福観が見えてくるかもしれない。筆者のこの記事を読んで、1人でも多くの日本人の学生がギャップ・イヤーを自分を見つめ直し、幸福に繋げることのできる絶好のチャンスだと考えてくれることを心から願う。

 

 

 

過去記事

幸福とは? Vol.1 ギャップ・イヤーについてのインタビュー

幸福とは? Vol.2 ギャップ・イヤーについてのインタビュー(2)
幸福とは? Vol.3 bOblesの遊べる家具から見るデンマーク人の幸福観

幸福とは? Vol.4 ギャップ・イヤーについてのインタビュー(3)

 

 

 

参考文献

[1]Overview. (n.d.). Retrieved March 28, 2016, from http://worldhappiness.report/

[2]The Danish education system – Uddannelses- og Forskningsministeriet. (n.d.). Retrieved March 28, 2016, from http://ufm.dk/en/education-and-institutions/the-danish-education-system

[3]Sunada, K. (n.d.). 一般社団法人 日本ギャップイヤー推進機構協会(JGAP). Retrieved March 28, 2016, from http://japangap.jp/greeting/