ヘルシンキの地域冷房

近年の環境や自然エネルギーへの関心の高まりを受け、「地域冷房」が注目されています。地域冷房単体というより、西洋に広く活用されている地域暖房や、その他の太陽熱や下水処理熱などの熱源を有効活用する方法として、熱源水ネットワークの一端を担う役割から注目されているといえます。環境に優しく、コスト効率とエネルギー効率を上げる熱供給方法として、フィンランドでは、導入が急速に進んでいる技術なのです。

西洋で一般的に普及している地域暖房は、CHPなどの大型の温熱源からパイプラインを引き、高温水をパイプラインに流す事で、人口が密集しているエリアに暖房を敷設しています。その一方で、地域冷房は、同じパイプラインの仕組みに、冷水を流す事で、冷房機能をもたせているものといえます。

フィンランドで注目されているその最大の理由は、コスト効率とエネルギー効率が抜群だから。データセンタなどで出た熱を冷却するため、また、大型商業施設で活用するため、フィンランドの冬でも冷房のニーズがあります。冷房に利用されて暖められた水は、循環して地域暖房にまわされます。例えば、空気に放出されてしまえば害となってしまう冷房から排出される熱、海水に放水されれば海水温度の上昇をもたらしかねない下水処理熱などが、都市を循環し、適切な場に再利用されています。同様に、地域暖房に使われ冷やされた水は、冷却水として活用されます。

フィンランドでは、暖房・冷房パイプラインの活用は、2000年頃から急速に発展してきました。そして、前述のように、下水処理熱/水、地熱、太陽光、ヒートポンプなど複数の熱源を活用、海水の冷却利用(冬場)、風力発電などが組み合わされて熱源水ネットワークが構築されているのです。特に,新規都市開発エリアでは,この傾向が顕著であるといえます。

地域冷房の利用は、まだ限られていて、世界でパリ、ストックホルム、そして、フィンランドのヘルシンキがトップ3。ヘルシンキで地域冷房が導入されたのは、1998年なのですが、この15年で導入が拡大されています。フィンランド国内では,ヘルシンキ(1998年),Turku(2000),Lahti(2000),Vierumaki (2002),Tampere (2012),Pori(2012),Espoo(2013)の導入事例があり,どれも複数温熱源や冷熱源を活用した循環式の熱源水ネットワークが構築されています。

最先端の試みで、環境により優しく・都市生活も快適にする地域冷房とそのエネルギーネットワーク、より詳細のレポートは、2014年11月末に公開予定です。